【心理学】グレートマザー

グレートマザーとは?

グレートマザー(太母)という言葉を知っていますか?

ユング心理学の専門用語なので、聞き馴染みのない方が多いかもしれません。

私自身も理解できているか怪しいのですが、
母との関係に悩む人には重要な気がしたのでご紹介したいと思います。

グレートマザーはざっくり言うと、

全ての人が無意識下に持っている「母なるもの」のイメージです。
(は?と思った方、待ってください…!)

突然ですが、「お母さん」は
私たちの社会でどんな言葉で語られることが多いでしょうか?

子どもを愛し、必要なものを惜しみなく与えてくれる、温かく優しい存在…

そんな文脈で語られることがまだ一般的ではないでしょうか?

漫画でいうとサザエさんに出てくるフネさんのような、
なんとなく社会で共有されている「母なるもの」のイメージがあるのではないかと思います。

このイメージは日本だけでなく世界でもおおむね共通してますし、
なんならはるか昔から同様の「母なるもの」のイメージがあります。

例えば、世界各地では地母神の神話が多く見られます。

大地の神=女神とされることが多いのは、
生きるために必要な食物を与えてくれる広大な大地は、
子を慈しみ育てる母親に通ずるところがあると誰もが感じたからなのでしょう。

このように、文化も時代も超えて
「母なるもの」のイメージの一致が見られるのは、

人々の無意識下でグレートマザーという同じイメージの型が共有されているからだと、ユング心理学では考えます。

私たちは「母なるもの」の人類共通のイメージを心の中に持っているということです。

グレートマザーの持つ二面性

厄介なことにこのグレートマザーは先述したような良い面ばかりではありません。

グレートマザーは、

全てを受け入れて、産み、育むという優しい面のほかに、

子を束縛し、自分の元から離れるのを許さず、全てをのみこんでしまうという恐ろしい面も持ち合わせているのです。

神話や昔話の中にも、グレートマザーの恐ろしい面が表れているものが数多くあります。

ユング心理学者の河合隼雄先生が具体例を挙げています。

わが国におけるグレートマザーの例をあげるならば、何でも受けいれ、育ててくれる像としては、すでに夢の例に示したような観音菩薩がその一例であるし、何ものも呑みこむ恐ろしいグレートマザー像としては、牛も荷車までも呑みこんでしまうような山姥などをあげることができる。あるいは、鬼子母などはグレートマザーの二面性を如実に示しているものということができる。

河合隼雄. 母性社会日本の病理 (講談社+α文庫) (p.23). 講談社. Kindle 版.

漫画で言うと、
恐ろしいグレートマザーはONE PIECEのビッグマムがぴったりではないでしょうか。
(名前もそのまんま!ですよね)

実の子供の寿命を吸い取ってしまったり、仲間がただで抜けるのを許さないビッグマム。

「来る者は拒まず、去る者は殺す」という主義からも、
まさしく全てを呑み込むグレートマザーの一面を現していると言えます。
(話が一切通じなさそうな感じが、ONE PIECEキャラの中で最恐だと思ってますw)

グレートマザーの二面性

自分の母親とグレートマザーが結びついた時

グレートマザーの特徴に自分の母親と重なるところはありましたでしょうか?

重なるとしたら、どちらのイメージでしょうか?

良い面の印象が強ければいいと思いますが、
グレートマザーの恐ろしい面が実際の母と近いのであれば注意が必要です。

それはなぜか?

グレートマザーのイメージと実際の母親が結びついてしまうと、
実際よりも母が恐ろしく襲いかかってくるように感じられるといいます。

その結果グレートマザーに呑み込まれてしまうと、
身動きができず、自発的な行動が取れなくなることがあるようです。

ちなみに私の母は、後者の要素が強かったと思います。
母は絶対的な存在で、逆に自分はものすごくちっぽけな存在だと感じていました。

今思うと、母の背後にいるグレートマザーに呑み込まれていたのだと思います。

グレートマザーと母親が結びつくと、実際よりも呑み込まれるような脅威を感じる

ならばそのようなグレートマザーに負けずに、自分を強く持つためにはどうしたらいいのでしょうか。

河合先生は、このように言います。

西洋人がその自我を確立してゆく過程には、母性との対決があり、内面的な母親殺しが行われる。

河合隼雄. 無意識の構造 改版 (中公新書) (p.95). 中央公論新社. Kindle 版.

 西洋における自我の発達の過程においては、母親からの分離が非常に大切なこととなる。これは、心理的にはグレートマザー的なものとのきずなを切断することでもあり、イメージとして表現されるときは「母親殺し」の主題となることが多い。自我が確立されていくときに、この母親殺しの主題をもった夢を見る人は西洋人に多いのである。
 しかし、筆者の体験からは、このような西欧的な自我の確立をめざしているような傾向が、日本人の中にも生じていると思われる。(中略)
 そして、もっと発達した人々にとっては、母親殺しの主題の夢も生じているのである。もちろん、この際に、母親殺しの必要性と、それにともなう罪悪感のため強いジレンマを感じる人も多い。そのようなジレンマがあまりにも強いため、母親殺しを断念する人もある。

河合隼雄. ユングと心理療法 心理療法の本(上) (講談社+α文庫) (p.188). 講談社. Kindle 版.

西洋では心理的に母親殺しが行われることで、
グレートマザーの支配から逃れ自我を確立できるとのこと。

そしてそれは日本人にも増えつつある、ということです。

私が数年前、イメージの中で母と決別したことがありましたが、まさしく母殺しでした。


その時は「自分の中の母親イメージ」を殺したと考えていましたが、
それこそが母と結びついた恐ろしいグレートマザーだったのかもしれません。

今では、以前ほど母に感じていたような恐怖や脅威がなくなりました。
ただの「一人の人間」としての母を見据えることができている感覚があり、
それはグレートマザーと実際の母を引き離すことができたから…なのかもしれません。

私個人としては、母殺し(現実の行動では反抗期にあたる)は、
自分の人生を生きるのに不可欠なのではと思っていますが、
河合先生によると一概に絶対必要とも言い切れないそうです。

理由としては、
やはり日本人は母離れが難しい人が多いこと、
また母性を避けすぎること自体の弊害が逆に欧米で見られているためです。

そのため、「母とつながりを持ったまま自立する」という新たな道を模索することが、
今後日本人にとって必要なのではないか、と語っています。

母親殺し以外でできること

実際母殺しと言われても抵抗があったり、
そもそも抽象的でどうしたらいいかよくわからないかもしれません。

その場合は、こちらの方法がより始めやすい一歩となりそうです。

意識的な把握によって、人間はその強力な布置から抜けでることができるということである。あるいは、意識による適確な把握ができたとき、元型的布置は自らその力を弱めていくとさえいいたい。

河合隼雄. ユングと心理療法 心理療法の本(上) (講談社+α文庫) (p.44). 講談社. Kindle 版.

「元型的布置=グレートマザーの影響」と置き換えてもらって大丈夫です。


つまり、

「自分が悩んでいる状況の背後に、グレートマザーがいるのではないか」

「母とグレートマザーが結びついているから、母が恐ろしいのではないか」

「自分はグレートマザーに呑み込まれているのではないか」

などと意識し、
そのような視点で自分の状況を捉え直すことが、
そこから抜け出す足掛かりとなるということです。

グレートマザーを感じられるような物語に触れてみることも
一つの手かもしれません。

自分の中のグレートマザーのキャライメージが、
よりはっきりしてくるかと思います。

そうしてグレートマザーの存在を
自分(や母親)と切り離して意識することができたなら、
その時はすでに「呑み込まれ」から脱出できていると言えるのではないでしょうか。

最後に

ややこしい内容&長文にもかかわらず、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!

今回引用した河合隼雄先生の本はこちらです。

母性社会日本の病理
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ユングと心理療法 心理療法の本(上)
created by Rinker

どれもグレートマザーについての記述は本の一部になります。
専門書寄りで難しめですが、夢分析や無意識の心の動きに興味のある方には河合先生の著作はおすすめです。

↓夢分析について以前書いた記事です。

<補足>
ONE PIECEのビッグマムを観てみたい方がいましたら、
アニメの789〜790話(ホールケーキアイランド編)が一番おすすめす。
ストーリーは途中ですが、ひとまずグレートマザーの雰囲気を知りたい方に。
でも、観ていて怖いと感じるようならやめてくださいね^^;

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